優しい「アイコンタクト」は、愛情表現の第一歩(医長が教える子どもの健康 2019年1月号) |
ヒトの眼には黒目と白目があり、横に長く切れた眼は、さらなる黒白コントラストを生じさせます。樹上生活から進化したヒトは、正面に両眼が位置しており、立体感を捉える能力が優秀です。前方の枝までの距離を正確に把握、優れた視力と色覚によって、跳躍しようとする枝の頑丈さを、瞬時に判断することも出来ます。しかし、視線から相手に自分の次なる、行動を読まれてしまうのです。採集狩猟時代の強者(捕食者)の前では、ヒト(被食者)の逃げ場を教えているようなもの。よって捕食者からは、ヒトは単独行動より集団の方が、安全性が高まります。また、ヒトが捕食者となり、狩りをする場合でも、集団の方が成功し易いのです。そこでヒト同士の、アイコンタクトが必要になります。
視力の発達は、生後1カ月で、眼の前の手が動くのがわかり、2か月で0.01前後です。3ヵ月で、あやすとニッコリ笑うようになります。他者からの視線を認知する能力は、対人交流の始まりです。また、はいはいの出来る赤ちゃんがママの表情を見て、透明な台の上をママの方へ渡るか否か調べる実験があります。ママの心配そうな顔では渡らず、ママの楽しそうな顔で渡りました。赤ちゃんは、ママの表情を見て、行動を選択したのです。
「アイコンタクト」が認知症の介護で、画期的な効果を示しました。それが、フランスから始まった「ユマニチュード」と呼ばれる介護方法です。「ユマニチュード」はフランス語で、「人間らしさを取り戻す」という意味。被介護者に対し、適度な距離を採り、顔の高さで、黒目を見詰めながら、優しく話掛けます。すると、コミュニケーションが取れず、無反応の被介護者に変化が起こったのです。表情も明るくなり、返事も返って来るようになりました。人は目と目が合い、さらに素敵な笑顔が伴うと、脳内の快楽ホルモン(楽しい、うれしい)の、ドーパミンが出ると云われています。同性異性を問わず、一緒にいて楽しいという気持ちになれるのです。
愛着とは、母子間の良好な相互信頼関係です。愛着が安定すれば、ママから離れると不安がりますが、再会するとママに抱かれ安心します。もし、愛着が不安定ならば、赤ちゃんの成長後、うまくいっているのに、だめになるような気がする不安感に、とらわれることが多くなるようです。以下、3つの愛着を安定させる点を挙げます。そのいずれにも、優しい「アイコンタクト」が、愛情表現の第一歩となっているのです。
1・スキンシップと安心感
スキンシップは、愛着形成を促すと伴に、安心感を高めます。アカゲザルの子は、針金製のお母さん人形より、温かい布製のお母さん人形好むようです。抱っこやハグをし、体を使って遊びましょう。
2・応答性:
応答性とは、赤ちゃんが助けを求めたり、関心を求めて来たら、それに応えることです。 但し、求めてもいないのに与え過ぎると、赤ちゃんの主体性が育ちません。
3・共感性:
赤ちゃんの気持ちを汲み取る関わりです。大人の視点ではなく、赤ちゃんの目線で感じ、考えます。そうした関わりは、愛着を安定させるだけでなく、赤ちゃん自身も他者を思いやる心を獲得して行くのです。