子育て応援ひろばすかりぶ

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医長が教える子どもの健康

ヒトのあくびは犬にもうつるの? それは共感力?(医長が教える子どもの健康 2019年7月号)

◎共感してもらうと、うれしく、安心する

 不安に襲われた時、話を聴いてくれる仲間がいて、「大変だったね。その気持ち、わかるよ。あなたなら、大丈夫」。そんな言葉をもらうと、孤独感は吹っ飛び、安心感が生まれます。共感されると、さらに会話もはずみ、仲間への信頼となるのです。もし、学校の先生が、生徒の声を聴かずに共感しなければ、学級内に不満が溜まり、陰湿ないじめの素地を生じさせます。一方で、互いに信頼、尊敬、共感すれば、すこやかな家庭となるのです。

◎ヒトは社会的動物である

 進化的に我々ヒトと、最も近い共通の祖先を持つ、チンパンジーもやはり、群れを成す社会的動物です。ヒトだけでなく、チンパンジーにも「仲間になりたい」と云う、本能があると考えられます。ヒトが4歳~6歳頃になれば、自分だけではなく、他者にも、心があると気付き、他者の考え、気持ちを読むのです。「心の理論」と呼ばれます。「誰が壁を汚したの?」「僕じゃないよ」とウソを付くのです。ママが悲しむ気持ち、叱られると予測出来るので、僕はウソを付きます。ウソはいけません。しかし心の成長として、喜ぶべきなのです。これから先、社会生活を営んで行けば、ウソのデメリットは十分学べます。

◎赤ちゃん返り

 まるで赤ちゃんに戻ったような振る舞いをし、特に、下の子が産まれたばかりの、上の子が2歳~3歳頃に起こり易いようです。2歳~3歳頃の赤ちゃんは、まだ、何も出来ません。まだ、生理欲求=ねむい・腹減った、安全欲求=こわいのイヤ が強いままです。そこに下の子と云う、強力なライバルが出現します。2歳~3歳頃では、「心の理論」も獲得していないので、ママの疲れ果てた気持ちを読み取れないのです。

◎人間のあくびは犬にもうつる?

 ヒトがあくびをする音を聞いて、犬はあくびをすることがあります。飼い主のあくびであれば、そうでないものに比べ、犬があくびをする確率は5倍に跳ね上がるのです。ヒト同士であれば、他人より友人、友人より親族の方が、あくびがうつる傾向があったとの報告もあります。その理由の仮説は、「あくびがうつるのは、相手に共感しているから」です。裏付ける材料として、一番身近なママを除き、4歳以降から他人からのあくびがうつり始めます。また、共感する力が弱い、統合失調症、自閉症、サイコパスには、あくびがうつりにくいそうです。

◎哺乳類脳

 京都大学霊長類研究所によれば、チンパンジーでも、あくびがうつったようです。ヒトの脳を大きく3つ分けると、ハチュウ類脳、哺乳類脳、大脳新皮質となります。ハチュウ類脳は、生存本能、生命維持機能。哺乳類脳は、感情、気持ち等。大脳新皮質は、記憶、思考、言葉、理性、論理を司ります。それぞれの位置関係を簡略に示すと、前者から順に上に乗り、大脳新皮質が最外側を覆う構造です。犬やチンパンジーにも、感情があります。ファシリティドッグと呼ばれる犬は訓練によって、ストレスを抱えた人に、愛情と安らぎを与えるのです。大手術を終え、痛みをこらえる幼児に、添い寝してあげます。幼児がウトウトし始めたので、離れなさなさいと命令されても、ベッドから降りなかったそうです。ハンドラー(犬をコントロールする人)からの命令に逆らっても、幼児がすっかり眠りに落ちるまで、添い寝を続けました。幼児の気持ちを読み取った、ファシリティドッグもすごいですが、ハンドラーとファシリティドッグとの、関係性も素晴らしいと思います。ファシリティドッグは、ハンドラーが自分の思いに共感してくれるとの、信頼感を持っていたような気がしてならないのです。

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